海賊と呼ばれた男 百田尚樹著 朗読を聞いて

この正月もテレビ番組は山梨学院大学が出ていた、箱根駅伝以外ほとんど見なかった。駅伝は若さと、元気を蘇らせるに十分であった。

しかし、それ以上の感動を受けた番組があった。それはNHKラジオ第2で4夜計6時間、橋爪功 朗読で放送された小説「海賊とよばれた男」(百田尚樹著)であった。自分はもともと読書好きではないし、最近視力も落ち読書には遠のいている。その代わりラジオで朗読や落語などを聞いている。

そんななか、今評判の「海賊とよばれた男」(百田尚樹著)が放送されたのだった。

上下2巻の小説なので全部朗読されたわけではなく、第3章中心のダイジェスト版に近いものであったと思うが、その分中身の濃い部分が抽出されていたと思う。

戦後の成長を支えてきたのは自分(田中)たちだとの多少の自負もあったが、戦後の経済界のアメリカ・イギリスとの戦いを生き抜いたこの男は凄い。本で読んでみようと早速図書館に予約を入れてた。じっくり読んでみたいと思う。皆さんにもおすすめします。そして感想を掲示板でお寄せ下さい。

その感激を私には表現できないので、ネットの書評の中から下記を転記してみた。。

 

以下どなたかのブログより転記させていただきました。

 

いやはや、なんという激しい人生だろう。こんな人物が居たとは迂闊にも知らなかった。
 マイカテゴリーとしては「小説」のカテに入れたが、ノンフィクションノベルである。出光興産の創業者・出光佐三(文中ではこの本名でなく「国岡鐡造」という仮名を使っている)の凄まじい苦闘の生涯を描いている。他の登場人物も仮名のようなので、ノンフィクションではなく、あくまでも〈事実を元に脚色構成した小説〉である、ということなのだろう。つまり、あらかた事実で構成されているとはいえ、歴史小説のように作者の解釈・推測による創作部分(特に会話シーン)が相当大きいウェイトを占める、ということではないか?しかし、読んでいるときは、その迫真力によって、まさに事実そのもののドキュメントという感じで読み進めた。そして、涙腺刺激度が非常に強い。何度も目頭が熱くなった。この辺の作者のテクニックは絶妙に上手。

 若い頃から順番に時系列で語るのでなく、いきなり終戦から始まって第一章「朱夏」(昭和20〜22年)で、会社の資産をすべて失った後の、それでも馘首は一切せず、ラジオ修理などでしのぎ、海軍の残した石油タンクの底にわずかに残った泥水混じりの石油の汲み出し作業という過酷な労役に従事し、公職追放を撤回させ、第二章「青春」(明治18〜昭和20年)で少年時代に戻り、進学後石油という商品の将来性に注目し、鈴木商店を蹴って田舎の零細小売店に就職して丁稚奉公をし、すぐに独立して石油の小売業を始め、海上に漕ぎ出して軽油を売るという奇手で旋風を巻き起こす。国内の規制の強さに海外市場に活路を求め満州に進出し、新調合の蒸気機関車用潤滑油で外国石油に勝ち売り込みに成功。と戦前の苦労は多くても順調な発展が描かれる。驚くべきはその社風。生産者と消費者を直接つなぎ、社員は家族という人間尊重の理念のもと、クビなし、定年なし、出勤簿もタイムカードもなし、労働組合なし、という常識外の人事制度。社員の優秀さ勤勉さの異様なまでの高さ。やがて石油禁輸が起こり戦争へ、店員の海外派遣での活躍。そして敗戦ですべてを失って再出発。
 下巻の第三章「白秋」(昭和22〜28年)で、石油業に再登場し、GHQの干渉と戦い、自前のタンカーという武器を得、直輸入でさらに発展する。石油メジャーとの対決。石油国有化騒動で窮地に陥ったイランからの石油搬送という難事業に挑み見事成功する。この過程の交渉や事務的な仕事の困難さも詳述してまさにリアルな描写が続く。この小説の白眉だ。第四章「玄冬」(昭和28〜49年)でもまだ戦いは続き、ガルフ石油との対等提携、石油精製工場の建設、シー・バース方式の採用、石油連盟との闘争。オイルショック。息も継がせぬ戦いの連続だ。なんという闘魂とタフネス!
 青春・朱夏・白秋・玄冬という普通の人生の四区分を章立てにしているが、この人にこの区分は似合わないと思う。生涯終わりまでずーっと朱夏が続いている!いやもうこれは青春と言ったほうがいいのかも。

 業界の悪しき慣例という空気に逆らい、外国石油資本の横暴に屈せず、毅然とした態度で筋を通し妥協せず、単に私企業の利益追求でなく日本国家のために尽くすという真摯な姿勢が、銀行家や官僚さらには外国人にまで多くの心酔者を得る。
 90歳を超えた高齢にしてなお勉強を続けたというその活力には参った!というしかない。全く凄い人物が居たものだ。

 今や「オイルピーク」の時代を迎え、石油枯渇が現実化しつつあるこの頃合いに、石油全盛期を使命感を持って担った人物の伝記を読むというのは、単に偉人伝として位置づけるだけでは済まない。鐡造は満足して幸福な生涯を終えたが、石油にジャブジャブ浸かりきったライフスタイルに対する反省的な部分が皆無なわけではない。